鏡板製造革命
私は業を煮やし、無謀にも「鏡板を我が社で製作するぞ!」と社員に宣言しました。資金も技術もない「ないないづくし」の会社が、世界にも類のない鏡板製造装置を造ろうと立ち上がり、3年の月日を経て、鏡板専用の大型複動油圧プレス・・・6000トンプレス機を誕生させることができました。
結果、加工時間は従来工法の30分の1になり、生産性は30倍になったのです。金型を使用したプレス加工ですから、品質(真円度・形状・寸法)は画一的になり、「受注後3日で納入」「価格は従来の50%」「品質保証」をお客様にお約束することができました。これは鏡板製造の商品革命とまでいっていただきました。
鏡板のJIS規格化にも参画し、弊社が提案した「鏡板の形状と寸法に関する企画案」が採用されたのを機に、自社で大型プレス機を据えて鏡板を製作していた大手メーカー様も、弊社からの調達に切り替えてくださいました。
6000トンプレス機で
さらなる発展
6000トンプレス機
6000トンプレス機の開発がきっかけで、鏡板の規格商品化を進め、専業化し、国内市場占有率60%を誇る鏡板のトップメーカーとして、産業界の発展に貢献してきました。商品革命からほぼ半世紀を経過した今日、曲げ加工技術では他社の追随を許さない高度なレベルに達しています。
その技術の集大成のひとつが、非常に加工難度の高い材料を用いて造られた、宇宙ロケットに搭載された燃料タンク用球形鏡板です。この経緯はNHK『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』平成15年(2003年)第112回「ハレー彗星に突入せよ 76年に一度の大勝負」で紹介されました。
弊社の歴史は、6000トンプレス機の存在なくしては語れません。私もこの機械と共に歩んでまいりました。強い愛着があります。
鍵を握った6000トンプレス機
平成19年(2007年)末に6000トンプレス機のメインシリンダーが破断する事故が起きました。永年使用による金属疲労が原因でした。翌年の8月には暫定工事で稼働させましたが、恒久化工事による完全復旧までには3年を超える期間を要しました。もし、常日頃、機械の点検を綿密に行っていたら、傷が小さいうちに修理できていたかも知れません。破断したシリンダーはわざわざ社内に展示室を設けて皆さんに見ていただいています。日常点検の重要さの教訓になればと思うからです。
破断したシリンダー